「産みの苦しみ」
この作品は、描きながらとっても苦しかった絵です。
どうしてかというと、「私ならその色は持ってこない」という私の声が、
「この色です」という指示のようなものと終始闘ったから。
私が普段あまり好んで持ってこない色がどどーんと真ん中。どんな絵になってしまうんだろうという思考が働いてしまったんですね。
「かっこよく仕上げたい」というい雑念が入ると、浮かんでいるイメージを素直な筆動きで描けなくなってしまう。
「いやいや、あなた黙ってなさい。このピンクだって言ったんだからこのピンクなのよ。」と自分に言い聞かせながらの作業でした。
みんなからしたら、不思議な世界かもしれないけど!
まず最初に下の二つの渦が浮かび上がってきて、その真ん中に龍のようなうねりが見えました。その躍動感をどうやって描くのかな、と他人事のように思いながら、ピンクがメインなんだとわかった時は、「え、本当に?」と動揺したんですよね。
でも仕方ない。そう言われたらそうなんでしょうと受け入れて、浮かんだイメージをなぞり始めました。
「またえらく派手な色の組み合わせじゃない?!」って途中で何度も思ってしまう。
最後までそんな感じでした。苦笑
ある程度全容を描き終えても、「まだ終わりじゃないな」感があり。
一旦乾かした後戻ってきて眺めると、龍のうねりの背に金彩の煙のようなものが浮き出した。
「そっか、今日はゴールドの絵具を使うのね。」とゴールドカラーを選びました。
躍動感の表現ためにインクペンシルを使って描き足すと、本当に生き物に見えてしまって、自分でゾワっとしたもんです。紙面から飛び出してきそうで。
この作品のタイトルが、これまたなかなか難産でした。
少し前に描いた「青龍」と同じで「朱龍」か「赤龍」か「桃龍」かとも思ったけど、
なーんか違う。物体の名称ではなく、この作品のメッセージの要約でないといけない気がして、粘ってみたのです。
そして行き着いたのが ”Birth” 「誕生」だったのです。
なんとなくこの作品のメッセージはわかっていたけど、ぴったりくるワードが思い浮かばなくって。二つの違う渦が出会った時に起こる化学反応のようなもので生まれる新たな存在とエネルギー。まさに「生命」だ!と思いました。
「一見違うもの同士に見えても、一度縁が繋がり共に生き始めると、思いもよらぬ新たな存在が生まれ、とてつもないエネルギーを生み出す。」
「自分の意図が結果を生むのではなく、自分の可能性の余白が知られざる自分と出会わせてくれるのです。予測不能であるということは、同時に自由だということだ。」
そんな感じの、今回は二つのメッセージでした。
「無償の愛」だったり、「出産」のようにも思えて。
描いている過程を思い出しながら、3人を自然分娩で出産した私は、「だから苦しかったのか」なんて妙に納得したのです。抽象画は全てそうなんだけど、この作品は特にとても神秘的な作品だと思っています。
いつも読んでくれてありがとう!
またね!