読売新聞
今日の編集手帳の一節
大正期の詩人、山村暮鳥に桜と題する詩がある。<さくらだという/春だという/一寸(ちょつと)お待ち/どこかに/泣いている人もあろうに>
花に浮かれる心をたしなめ泣いている人を思いやった暮鳥の優しさにうなずきつつ、だが―とも思う。生き残った者の誰かしらが、生かされているある者の誰かが世の中の歯車を動かしていかねばならない。音は小さくとも、季節の催事も〃ガッタン〃と刻む歯車の一つであろう。……
生かされているある者として、計画停電もあり、余震もあるが、日常生活をガッタン、ガッタンと今日も動かしていかなければ亡くなった方々に申し訳ないと思う。