野坂昭如

毎日新聞、野坂昭如の「七転び八起き」の一節

残酷な光景が広がる。改めて災害列島だと思い知る。昭和20年、日本列島は焦土と化していたが、明日に向かっていた。
住民が力を合わせてなど、よそ者意識のあらわれだろう。都民は、こんなにあっさりと帰宅不可能になる自分たちの日常の脆さを痛感したのではないか。その日常の脆さをさらに思い知ったのが福島原発事故。想定外。それは、人の命に関わり、一歩のズレが破壊的な結果を生む。
都内の主要駅で、カメラに向かいヘラヘラと手を振る若者の姿があった。違和感があり、情けなくもある。呑気な若者をつくってきたのは我々大人だ。彼らを煽って飯のタネにしているのも同じ。普段と変わりない居酒屋、カラオケは、原子力発電によるものである。スーパーから水、米、あらゆる食べ物が失せた。自分の食について普段から考えておくことは人間、一人一人のあたり前。
救援の手はいくらあってもあり過ぎることはない。

今回の震災。この文章を読みながら生き方を考えさせられる。