福島智

 無音漆黒の世界にただ一人。目も見えない、音もない。福島智氏の世界。

 ぼくが光と音を失ったとき
 そこにはことばがなかった
 そして世界がなかった

 朝、私は講談社野間道場に通う。その裏に木立に囲まれた筑波大学附属盲学校高等部がある。そこで彼は学んだ。
 無音漆黒の世界から、指先先だけの言葉によって彼は東京大学先端科学技術センター教授になった。五体満足に感謝するとともに、その五体を使い切れない自分を卑下する。その落差は、2000分の一。

 ぼくの指にきみの指が触れたとき
 そこにことばが生まれた
 ことばは光を放ちメロディーを呼び戻した

 コミニケーションはぼくの命 
 ぼくの命はいつもことばとともにある
 指先の宇宙で紡ぎ出されたことばとともに

 指先からの会話。彼を無音漆黒の世界から救った。聞くこと・話すことこそが、人を救い、深め、社会に役立つ人を成すのか。

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