無欲

 山形県天童市立体育館で、剣道の稽古をした。
相手は、80歳。面を打つと面に合わせる。攻めて、面に行くと胴を抜く。力と気を入れれば入れるほど、それを柔らかく受け流す。柔よく剛を制す。最後に捨て身の面に行ったが、及ばず胴を返された。

 面を取り、目の前に広がる秋の稜線。若さと力は私に分があった。しかし、稽古の結果は、私が悪かった。何故だろう。道場を渡る風を感じながら、山々をまた見る。答えは「無欲」。打とうとも思わない、打たれてもかまわない。芸に遊ぶの境地がその瞬間に相手に有ったのだと思った。人生を確りと生きた方で、現在も規則正しい生活を送っている人と聞た。何かを学んだ気がした。