久々の観劇 「春琴」 三軒茶屋にて

『春琴』
―谷崎潤一郎「春琴抄」「陰翳礼讃」より
[演出] サイモン・マクバーニー
[作曲] 本條秀太郎
[美術] 松井るみ+マーラ・ヘンゼル [照明] ポール・アンダーソン
[音響] ガレス・フライ [映像] フィン・ロス
[衣裳] クリスティーナ・カニングハム [人形製作] ブラインド・サミット・シアター
[プロダクション・マネージャー] 福田純平
[プロデューサー] 穂坂知恵子+ジュディス・ディマン
[出演] 深津絵里/チョウソンハ/笈田ヨシ/立石凉子/内田淳子/麻生花帆/望月康代/瑞木健太郎/高田恵篤/本條秀太郎(三味線)

先週。
M.M.S.Tの百瀬氏からの誘いがあり、三軒茶屋にある世田谷パブリックシアターに行きました。
時たま劇のお手伝いなどで足を突っ込んではいますが、時間的や物理的な制約になかなか観に行けないものです。ましてや千葉に越してからというもの、東京で行われる舞台の時間に間に合うのはなかなか難しい。
なので若干どうしようか悩んでいましたが、「絶対に見た方がよい」と言う。
彼がそこまで言うので、なんとか都合を合わせて行くことに。
今年観た、限りある作品の中で、私の中では一番の作品でした。
舞台というよりも何か、「映画」を観ている印象。
舞台上の時間軸は、[現代]、[谷崎潤一郎の時代]、そして、[春琴が活きていた時代]の3つの時代が良いリズムで流れます。
舞台上も場面ごとに大掛かりな装置が動くわけでなく、役者が持ち、動かす棒と畳。
役者さんが動いて作り上げている舞台ですが、その動きすらも美しく、それだけで、”昔の日本”を表現する。
約2時間ですが、観ていて本当に気持ちのよいリズムでした。
海外の人が観て好きな「ジャパン」(ジャポニズム?)臭いところもちょっと感じましたが、それでもあの時代の日本を良く研究されているなという印象でした。
以前、鈴木忠志さんの劇を観た時も強烈な印象を受けましたが、また違った強い印象を受けた作品です。
今回の作品だけでの表現ですが、鈴木忠志さんが北斗の拳の「ラオウ」なら、サイモン・マクバーニーさんは「トキ」というところでしょうか(笑)ケンシロウは誰だろう?
「春琴」、劇中の最後。
立石凉子さん演じる”現代の女性”の言葉。
「時間は戻らない、だから進むしか無い」
ただ単に過去が良いってことではなく、その古き時代があって今がある。
その先を、未来をどうやって作り出して一歩一歩”活きて行く”のか。
そんな前向きな感じを与えてくれた素晴らしい劇でした。
「春琴」からは少し外れて・・・。
原作の「春琴抄」にもあるように、師弟関係ってのはなかなか厳しいものです。
理不尽なこともあります。が、そこは一切の妥協のない”芸”を極めるということにおいてとても大事な部分だと思っています。
私は、「文」も「武」も脇道にそれてしまった人間ですが、そういう場に身を置いている方と話をすると、粘り強さというか、強さを感じます。
そして、家族関係とはまた違った絆の強さを感じるこのごろです。

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