池澤夏樹

 「深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは黒染めに咲け」
 桜の華やかさは弔慰の春にはそぐわない。だから薄いねずみ色の、喪の色の桜を、
 と自然と向かって言う。だが自然は無関心だから例年のように華やかな色の桜を咲かせ、
 それを見て却って我々は安心する。
 
 東日本大震災。何を思い、何を考えるか。人と、言葉と、神と、自然を考えさせる本。
 

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