橘曙覧(たちばなのあけみ)
産経新聞、幕末から学ぶ現在に橘曙覧があった。
日本に来日したクリントン米大統領が、公式晩餐会の際の挨拶に援用した歌人である。
その人が、独楽吟を残している。ふと心が温かくなる。
たのしみは草のいほりの筵(むしろ)敷(しき)ひとりこゝろを靜めをるとき
たのしみはすびつのもとにうち倒れゆすり起(おこ)すも知らで寝し時
たのしみは珍しき書(ふみ)人にかり始め一ひらひろげたる時
たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時
たのしみは百日(ももか)ひねれど成らぬ歌のふとおもしろく出(いで)きぬる時
たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時
たのしみは物をかゝせて善き價惜(をし)みげもなく人のくれし時
たのしみは空暖(あたた)かにうち晴(はれ)し春秋の日に出でありく時
たのしみは朝おきいでゝ昨日まで無(なか)りし花の咲ける見る時
など。
時に追われる生活。静かな時を味わうことも大切か。
たのしみは心にうかぶはかなごと思ひつゞけて煙草(たばこ)すふとき