辺見庸
日経新聞の文化欄。宮城県石巻生まれの辺見庸が「影の行列と目に刺さる星々」を書いている。
ー友達が震災後、徒刑囚のように疲れきった人たちの細い長い群れが、一面の瓦礫の原を、海側から山にさまよっていく姿を見たと。
友達が避難所にある外のトイレで順番を待ちながら空を見上げたとき、目に突き刺さるほど近くにあった銀色の星々を。
友達は「どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる遑(いとも)はない」とある芥川龍之介の羅生門の言葉を思い出したと。
友達はルース駐日米國大使夫婦等が床にひざまずき、老人や子どもたちを、これまでに避難所にきただれよりもやさしく抱擁し頬に接吻したその姿に、嗚咽したと。ー
四千人が亡くなるか行方不明になちた街、石巻。
そして、友達は「ミズクダサーイ。ミズナイデスカアー」かと風に乗ってくるうめき声を聞くと。
私は人には、祈りはなくてはならないものと思った。